TEXT 02 of onestone

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②境界

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私は、小さい時からピストルのおもちゃを買ってもらったことがありませんでした。代わりにいつも遊んでいたのは電車や車のおもちゃでした。
 今、父親になって、同じように子供達に電車をあたえ、自然環境について語り、野山でで遊び、美しい花の絵を描いています。私も祖父母、両親も、この何十年の間に繰り返された闘争と戦争の記憶をわかりやすく子供に伝えるよりも、殺りくの直接的道具「武器」のおもちゃを遠ざけたのでしょう。
 この作品で使っている機関車は、満州鉄道であり、西部開拓時代にアメリカインディアンが襲ったと言われている機関車です。機関車は、文明文化の象徴だったのと同時に侵略の道具でもあったのです。
 国家という権力を持った集団は、文明文化、繁栄の名の下に、豊かな自然と共に暮らしてきた先住民から聖地を奪い、重労働を課し、まず線路を引きました。そして、貨車には、武器、弾薬、兵士を満載して機関車を走らせ境界線を引いていったのです。

 二階の部屋は、女中さんの牢部屋でした。
 この部屋の仕組みは、彼女が目にしていた八十年前から今もあまり変わることのない「外の風景」を、もうすぐ取り壊される旧谷口医院の「内部」に記録し続けています。
 昼間でも薄暗い勝手口から、すでに壊されている台所には、鉄板を設置しました。この装置で、大正、昭和、平成と歴史的に激動の時代に、淡々と食事を作り、男達を「外の世界」へ送り出した「家の人達」が無意識に引いていた心の中の境界を表現しています。台所の真ん中に納められた石のシンクは棺です。

1997年4月25日  息子、六歳の誕生日。祖母の命日。